主にAndroidスマートフォン+MX動画プレーヤー(MX Player)を想定しています。
rtsp://で始まるURLに対応したアプリを使うか、または(自己責任で)レジストリを弄ってRTSPにWindows Media PlayerとかVLC media playerあたりを関連付けてください。
とりあえずPC用のWindoes Media Playerおよびその他MMSベースのプレイヤーにも対応しました。 (2013/03/17)
きっかけは「高品質・高画質」を謳う「K」の出現でした。
Kとは2011年10月からサービスが開始されたKBSラジオ・テレビ各系列のストリーミング配信サービスで、まずPCのブラウザ用からスタートし、スマートフォンアプリ「Player K(KBSの番組やサイトでは「K Player」「Player K」2種類の呼称が使われてきたのですが、最近こっちに統一されたらしいです)」が出てきたのは2012年夏頃だったように思います。
これとは別にKBSのスマートフォン用公式サイトに、外部プレイヤー経由での視聴のためのラジオ・テレビ各系列のタップ用リンクが存在し、アプリとしても2010年からラジオ専用「R-2 Player」が提供されていました。しかし、前者は昨夏頃から海外からのアクセスが遮断され(海外からのアクセスを試みると「著作権関連でサービスしていません」のダイアログとともにハネられる)、後者はPlayer Kに合流する形で2012年末をもって提供が中止されてしまいました(サービス終了を見越してか、R-2 Playerは2011年に韓国メーカーを含む各社から横1280ピクセル以上のHDスクリーン端末が発売されて以降も、WVGAを超える解像度には対応しませんでした。該当する端末で使うと画面が崩れて悲惨なことになったものです)。
このKサービスは開始当初から韓国内専用です。PC用サイト(ブラウザからFlashプラグインで視聴)とiOS(iPhone/iPad)、Android用のアプリが提供されていますが、Androidの場合、Player Kアプリは韓国内キャリアのGoogle Playストアからしかダウンロードすることはできない上、キャリア情報変更(偽装)アプリを使ってPlayer Kを手に入れたとしても、いざ起動してみると「国内でのみ接続可能です」というダイアログボックスが出て、海外からの視聴はお断り、という念の入れようです。PCサイトやiOS用も含め、(おそらく)IPアドレス判定によって、韓国外からのアクセスを弾いている模様です。
ただし…実は昨年末、クリスマスのちょっと前のことですが、試しに韓国某キャリアにセットした日本の回線からPlayer KをDLしてみたら、DL後約2日間だけは日本の回線設定に戻してもパケット、Wi-Fi経由ともに使えていました。ラジオはもちろん、テレビ(たぶんストリームの解像度はWVGA程度、ビットレートは500Kbps前後か)もWi-Fiであればかなり安定して綺麗に視聴できました。画面にオーバーレイする番組表から各放送系統を選択できる凝ったデザインで、番組へのメッセージ送信やSNS連携機能もあります。動作も以前のR-2 Playerと比べ安定していて、韓国の放送局公式アプリとしては最高の出来だと思います。KBSメインサイト経由のポップアップでは混雑で見られない某ドラマなんかもどうにか見られたので、サーバーの能力もそれなりにあるようです。
しかし、クリスマスが終わる頃には、件のダイアログが出るようになってしまいました。普通に視聴できて、ぬか喜びしたものですが、おそらくクリスマス限定で海外アク禁を無効にしていただけだったのでしょう。
どうしてもPlayer Kを日本で使うなら、あらかじめMarket EnablerなどでPlayer K本体を入手しておいた上で、韓国のProxyサーバーかVPNを経由させるぐらいしか方法はありません。ただ、一般にProxy(特にProxyディレクトリサイトで紹介されているもの)は神出鬼没で、見つかっても長期間安定して使えるものは稀ですし、素性もわからないものが多いので、おすすめしません。VPNもサーバーを提供(公開)してくれる相手がいないと難しいですし。
このように韓国各放送局が直リン対策や海外アク禁に力を入れるのは、1に著作権・コンテンツ保護(録画防止)、2に広告(バナー、視聴開始前のCM)誘導のためと考えられます。海外アク禁は欧米・中華圏の一部、NHKラジオの「らじる☆らじる」なんかでもやっていることなので、海外のリスナーとしては文句の言い辛いところでもあります。もちろん回避方法はいろいろありますが(「らじる」も海外で日本の自宅・実家などにProxyを立てたり、VPNを張って聴いているリスナーが少なからずいるようです)、はっきり言って面倒ですしね。
すでに2000年代半ばから韓国ラジオ・テレビ各局の直リン対策は手が込んできていて、まず各局公式サイトでログインが必須となり、現在はソウルのキー局だけでなく地方局にまで拡大しています。初の局専用プレイヤーであるMBCのmini登場以降は、ログインこそ必須ではないものの、専用プレイヤーによる囲い込みも進みました。当初は固定URLで、アプリ本体をテキストエディタで開くとURLが丸見えになるようなものもありましたが、現在は再生ボタンを押すたびにサーバーから可変URLを拾ってくる方式が主流のようです。ランダムな英数字を含む数百文字もの長さを持ち、しかも約10分単位で変更されるので、たとえ「mms://」で始まるURLが判明したとしても、パーマネントリンクを張る行為を無力化してしまっています。先述のR-2 Playerも、途中で当初の固定URLから可変URLに変更されたようです。
あと、最近はFlash(RTMP+MPEG-4ないしはH.264)を使った配信も増えており、たとえURLが判明しても、PC上の一般的・汎用的なプレイヤーで再生する手段がありません。VLCの1.1.xあたりが汎用性の面ではまともかと思いますが、決して万能ではありません。
こうした状況の打開策は現地のリスナーもいろいろ考えているようで、KBSのサイトから可変リンクを拾い出し、汎用のストリーミング再生アプリにURLを渡すためのphpやPythonスクリプトがいくつか出回っていて、サーバーでの提供も行われています。
現状、URLの取得方法が判明しているのはPC用ラジオアプリ「Kong」用のサーバーだけなので、テレビは無理ですし、Windows Media Audio(WMA)形式なのでMMSストリーミング対応のアプリでは聴けるようになりますが、Android端末用の汎用メディアプレイヤーとして日本でも世界的にも最もメジャーと思われる「MX動画プレーヤー」(ちなみに韓国製らしいです)ではダメでした。
MX動画プレーヤーで聴けない理由はすぐにわかったので、まずは自力でなんとかすべく、ネット上から拾い集めたサンプルを継ぎ接ぎしてどうにかでっち上げたPHPスクリプトをローカルサーバーで動かしてみたら不安定ながらもうまく行ったのですが、問題はそれをどこに置くか。
何か良い手はないかとあれこれググっていたら、mielikki氏によるGoogle App Engine用Pythonソース(リンク先はハングル)を発見。これをベースに、MX動画プレイヤーにも対応できるように手を加えた上、さらにKBSの第1ラジオとHappy FM(第2ラジオ)もカバーできるようにしたスクリプトをGAEにdeployしてみました。このPythonソースに出会わなければ、純粋にオンライン開発環境で非デベロッパーには縁がないと思っていたGAEや、日本ではややマイナーなPythonなる言語を利用することもなかったでしょう。そもそもこのサイトの更新再開自体、ありえませんでした。この場を通じてGAEとPythonへの目を開かせてくれたmielikki氏に深く感謝します(って、日本語onlyのここで言っても仕方ないですが…)。
ちなみに、Kongと先述のPlayer Kとはサーバーも完全に別になっているようで、Kongのコーデックは昔ながらのWMAなのに対して、Kのほうは現行のKBSメイン/モバイルサイトと同様、AACのようです。ラジオのビットレートはわかりませんが、KongのWMAが64〜128Kなので、同等でしょうか。地上波の完全中継なので、Kongでは地上波の時報と差し替えられている、あの時報前の悪趣味なネット専用ラジオCM(美容整形など)は流れていません。
Kは後から出てきた分、リバースエンジニアリング対策も万全のようで、ストリーミングのURLを取得する方法はわかりません。現にKがサービスインして結構経つのに、まだKベースの直リンサイトは発見できていませんし。しかも、サーバー側で海外アク禁を施しているとすれば、仮に直リンの突破方法が見つかって韓国内で視聴可能になったとしても、日本では韓国のProxyなどを通さない限り、絶望的かと思います。
このPlayer K以上に手の込んだ直リンや海外アク禁対策が施されているとみられるのが、地上波各局相乗り(出資元はMBC+SBS)で昨秋からサービスインしたライブ/VODサービス「pooq」です。サイトのライブ配信時のHTMLソースをちょっと覗いてみましたが、暗号化されているURL(と思われる文字列)の長さが半端じゃないですね(なお、pooqには海外在住会員制度もあって、有料VODの一部が利用できるようです)。
いわゆる「韓流」に代表される、ここ数年の韓国産コンテンツの輸出拡大や、もしかしたら米国とのFTA締結などの影響もあるのか、コンテンツ保護・管理の厳密さは一気に国際水準、ないしは最先端に到達してしまいました。Kやpooqのみならず、通信事業者などがユーザー囲い込みのためにやっているサービスも含め、ここ数年間に開始された新規のサービスでは、ライブ配信はいずれも基本的に韓国内専用となっています。
今はまだ海外でも利用可能なKongやMBCのmini、SBSのGorealra(ゴリラ)なども、いずれR-2 Playerのように廃止される運命にあるのでしょうか。
韓国で初めてMBCがRealAudioによるリアルタイム放送中継を始めたのは、まだアナログモデムによるダイヤルアップ接続がごく普通に使われていた1996年。全世界で聴けることを謳って華々しくスタートしたはずなのに、17年後のいま、純粋に海外で韓国のラジオやテレビを楽しみたい視聴者にとって、こんなに厳しい時代になろうとは。